ホテルが高い…観光需要の回復などで「宿泊料」25%余上昇
2024年4月19日 18時11分
「高い!」
大型連休を前にホテルを予約しようとしたとき、そう感じた方もいるのではないでしょうか。昨年度の平均の消費者物価指数が発表され、ホテルなどの「宿泊料」は、前の年度より25.5%上昇しました。影響は、働く人の「出張」にも…。上昇はいつまで続くのか、取材しました。
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宿泊料(前年度比)20年間の推移は
“ホテル代が高いのでふだんの生活で節約”
ホテルなどの宿泊料金が上がっていることについて、東京・新宿で話を聞きました。
都内に住む60代の女性
「ライブなどでもあちこち行きますが、コロナ前に比べるととても上がっていると感じます。出費の増加はきついですが、楽しむことを1番にしているので他でやりくりしています」
神奈川県に住む30代の女性
「観光や仕事で東京に出てくる時にホテル代が上がったなと思います。駅から近いところを選んでいましたが、遠くてもいいかなと思うようになりました」
テーマパークに行くため友人と一緒に長野県から訪れた30代の女性
「千葉県で2泊する予定ですが、前に泊まった時より値上がりしているなと思いました。ホテル代が高いということもあり、旅行のためにふだんの生活でも節約をしてきました」
出張の宿泊費 上限引き上げる企業も
こうした中、社員が出張する際の宿泊費の上限を引き上げる企業も出ています。
東京・港区に本社を置くIT企業は求人サイトの運営などを行っていて、200人以上の社員が働いています。
この会社では去年12月までは社員が出張する際の宿泊費について、1泊につき上限を全国で一律1万円としてきましたが、ことし1月から1万3000円に引き上げました。
会社によりますと、全国的にホテルの宿泊料金が上昇し、出張の際宿泊費の上限を超えるケースが増えたためだとしています。
この会社の宮崎県のオフィスに勤める中村駿太さんは去年1か月から2か月に1度、東京の本社に出張していましたが、夏ごろから宿泊費の上昇を感じていたといいます。
それまでは、本社から徒歩圏内のホテルを利用していましたが、次第に予算内のホテルを見つけることができなくなり、電車で乗り換えが必要なエリアにも範囲を広げてホテルを探すようになったということです。
中村さんによると、宿泊費の上限が引き上げられてからは、本社周辺のホテルを予約できるようになったということです。
中村駿太さん
「上限が引き上げられたことであまり時間をかけずにスムーズに予約ができるようになり、非常に助かっています。ホテルからの移動の時間を考慮しなくていいので、働きやすくなったと実感しています」
株式会社リブセンス 楠本匠 執行役員
「宿泊費の上限を引き上げることで生産性や営業効率、業務効率といったところに寄与できるのではないかと思っている。表面上の費用は増えるが、生産性を上げて働きやすい環境を作ることで総合的にはプラスの影響が大きいのではないかと考えている」
客室の平均単価 上昇のホテルでは
国内外の旅行客の需要回復などを背景に客室の平均単価が上がる中、競争力をさらに高めようと、フロアの改装などに積極的に取り組むホテルもあります。
東京・新宿のホテルでは去年1月以降、1200室以上ある客室の稼働率が月ごとの平均で90%を超える状況が続いています。
去年の客室の平均単価は▼コロナ禍前の2019年との比較ではおよそ1.2倍の水準となったほか▼直近のことし3月も去年の同じ月に比べおよそ1.3倍の水準となりました。
ホテルによりますと、背景には、国内外の旅行客などの需要が大きく回復しているほか、物価の上昇に伴い食材や光熱費などのコストが上がっていることがあるとしています。
こうした中、このホテルでは競争力をさらに高めようとフロアの改装などに積極的に取り組んでいます。
去年12月一部の客室フロアでじゅうたんや壁紙の貼り替えや高機能のドライヤーやシャワーの導入を進めたのに続き、来月以降は順次、別のフロアでも同様の改装を行う計画だとしています。
またロビーでは去年、待ち時間を短縮するため、自動チェックイン機の数を増やしたほか、ことし2月にはエントランスに空港行きのバスを待つための休憩所を新たに設けました。
新宿ワシントンホテル企画課 横内兼課長
「価格が上がる中でも、コストパフォーマンスは非常に重要で、価格に見合っているとお客さんが実感できるようなソフト、ハードの改善を図っていかなければならない。滞在満足度や付加価値の向上をどんどん進めていきたい」
専門家 “ホテル代の上昇というトレンド もうしばらく続く”
ニッセイ基礎研究所の安田拓斗研究員は宿泊料金が上昇していることについて、「コロナが終わってきて需要が大きく回復する中、人手不足が発生している。人手を獲得するために賃金を上げなければいけない状況で、その価格転嫁がホテル代に起きている。また、物価上昇によるコストの増加をホテル代に価格転嫁する動きもみられる」と指摘しました。
その上で、今後の宿泊料金の動向については「人手不足感はもう少し続くことが予想され、ホテルで使われる経費も高水準で推移していくため、もうしばらくホテル代の上昇というトレンドは続いていくとみている」と述べました。
また国内旅行客の動向については「物価が上昇し、ホテル代も高騰する中、個人の実質所得は低下してきているので、旅行にさける予算も限られてくると思う。そうした意味ではホテル代が安い地方などに目を向ける観光客もいるのではないか」と話していました。
昨年度の平均の消費者物価指数 結果は【詳しく】
総務省によりますと、昨年度の平均の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた指数が、前の年度より2.8%上昇しました。
1981年度以来41年ぶりの高い水準となった前の年度の3.0%より0.2ポイント縮小しました。
このうち「生鮮食品を除く食料」は前の年度より7.5%上昇しました。
具体的には、▼「鶏卵」は24.5%、▼「アイスクリーム」は11.6%、▼外食の「ハンバーガー」は9.2%、▼「あんパン」と「からあげ」は7.2%上がりました。
また、▼「宿泊料」は、観光需要の回復などを背景に25.5%上昇しました。
一方、政府の負担軽減策などで、▼「電気代」はマイナス15.5%、▼「都市ガス代」はマイナス11.7%となりました。
また先月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数が、去年の同じ月より2.6%上昇し、2月から0.2ポイント縮小しました。
このうち「生鮮食品を除く食料」は去年の同じ月から4.6%上昇しました。
上昇率は前の月から0.7ポイント縮小し、去年9月から7か月連続で前の月を下回りました。
総務省は「外食では人件費の上昇に関連した値上げの動きも出ている。足もとの円安が食料品などの価格に影響するか確認していきたい」としています。
生鮮食品 エネルギーを除いた指数は3.9%上昇
公表された昨年度の消費者物価指数で生鮮食品とエネルギーを除いた指数は前の年度から3.9%上昇しました。
上昇率は前の年度から1.7ポイント高くなりました。
総務省によりますと第2次オイルショックの影響が続いていた1981年度の4.0%以来42年ぶりの高い水準となりました。
政府によるエネルギーの負担軽減策が昨年度の消費者物価指数の上昇率を押し下げていますが、生鮮食品とエネルギーを除いた指数では上昇率は前の年度よりも大幅に上昇しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240419/k10014426841000.html