あなたは今の仕事に向いていると思います。まだタフになれないだけのことですね。病院で仕事していれば、人が死ぬのは当たり前ですし、老人病棟では毎日何人も亡くなっています。

　つまり、厳しい言い方ですが、そうした現実に慣れていないだけのことでしょう。でも、慣れ切ってもいけない。私の仕事にも自殺がつきものですが、今でもそういうことが起きたら普通ではいられません。普通ではいられませんが、でも仕事を休むわけにはいかない。

　まだ初心の頃、とても仕事などできない気分になったことがありましたが、先輩から「そんなことではこの仕事を続けていけない」と言われました。「こっちの気持ちも知らないで」と思いつつ、渋々仕事をしましたが、その週に面接した中には、３人の自殺未遂者（リストカットなどではない）がいたんです。そのことが私を変えましたね。「こんな自分でも、当てにしてる人がいるんだから、元気でいないといけない」。

　自分の気持ちなど後回し。そんなものは小さいことです。以来、さっと葬式に行って、その夜には戻って面接をするのも当たり前のようにやります。私の場合は、親の死に目よりも面接が優先です。これはもう考えるまでもないことです。

　私は極端なほうだと思いますが、人を援助する仕事っていうのは、そういうところがないとね。あなたの場合も、職場の人間に不信を抱いたということですが、その人たちのために仕事をしているわけではないでしょう？　「仕事」って、「事」に仕えるってことなんですよ。